doubt crime
舞台設定


1話 号外

これは、寒さの和らいで来た頃のこと。確かあの日は雨が降っていた。洪水になりかけたくらい凄かったっけな。
正直、家から出る気にもならなかったんだ。余りの雨の凄さのせいでね。
でも、外で号外号外騒いでる人が居たから、ちょっと気になって新聞を貰いに行った。
外は寒いから、家に帰り、貰った新聞を見る。見出しは、
『国立博物館にて先日発見された古代の金貨盗まれる!』
とのこと。号外号外言うから何が起きたのかと思ったけど、思っていた程の事件じゃないらしい。
夜も遅いし、もう寝ることにする。
その翌日の昼こと、またしても号外号外騒いでる人が居る。
どうせ、またくだらないことだろうと思いつつ、新聞を貰いに行ってしまうのは、どうしてなんだろうな。
見出しは、
『タレコミ情報、目撃者による昨晩の事件の犯人像!』
今度は事件のタレコミか...くだらない。
普通の新聞に載せれば良い話じゃないか。
そうは思いつつも、つい気になって写真を見てしまうのだから不思議なものだ。
こんな事件を起こした奴の顔はどんなものだろうか。興味半分に写真を見る。
そこに写っていたのは、痩せ型で長髪。黒髪で少々目付きの悪い、20前後の男性の写真。
そう、正に俺の姿だったのだ...!
更には、名前までもが記載されていた。
白野 光(しらの ひかり)
顔がそっくりなだけでなく、更には同姓同名。
そんな偶然あるものか!そんな偶然のせいで、これから世間からは白い目で見られるだろう。誤認逮捕さえ去れるのであろう!
...
そんな偶然は、なかった。そう、『白野光』という人間は、この国には一人しか居なかったのである。
つまり、俺は、こうして国家犯罪者としてのレッテルをそのまま貼られることになる。
事が大きくなる前に、警察に弁解しに行かなければ...
ということで、近所の交番へ出向いた。
だが、まだ、法が整っていない時代。警察が犯罪者のレッテルを貼られている人間の話を聞くまでもなく、銃を発砲してきた。
何とか、裏道に逃げてその場は助かったが、これからどうした物か。
どの道、真犯人が捕まるまでは、外も歩けない。
影に隠れながら、真犯人を探し出し、捕まえるしかないだろう。
まずは、知り合いの警察官を尋ねてみよう。彼なら、話が通じるかもしれないし、味方に付けられれば、これからの捜査も上手く進むだろう。